これからの造形

フィギュアの造形に命をかける。そんな人がいたっていい。自分がそんな人である。
ワンルームで道具が散らかった部屋の隅を放置して、作業エリアとしている部屋の真ん中で今日も美しいフィギュアを作るため原型をひたすら作る。
去年作ったフィギュアは傑作だと思っている。今後の発展が楽しみだ。
念のために細部の確認をしよう……無い。傑作がない。私の作った。それがない。あんなにもきれいな曲線ができたのに。


プルルと電話がなる。電話を取る。
「もしもし」
「フィギュア」
「はい?」
何を言っているのだろうか。理解はできなかった。
「フィギュア大事だよなぁ」
「それはそうですね」
「フィギュア、返してほしくないか?」
ここで初めてフィギュアが電話をかけてきた人の手持ちにあるということを理解した。
「返してくれ!大事なんだ!本当に!傑作なんだ!」
「まぁまぁ。コレは人質だから。身代金、くれよ。」
そんな金はない。ただひたすら技術を磨いていた。金なんか必要ないと思っていた。こんなことになるとは。
「いくらだ?いくらあれば返してくれる?」
頼むから1000万以上は要求しないでくれ。そう思っていた。
「フィギュアだ」
「フィギュア?」
またもや理解できなかった。年だろうか……。
「フィギュアを新しく人質にくれ。そうしたらこのフィギュアは返す。」
「その新しいフィギュアを返してほしいときはどうすればいい?」
「別のフィギュアを人質にくれ。」
変な奴だ。これでは永遠とフィギュアのやり取りをこいつと続けなければいけなくなる。やり取りを強要するとなればあいつらからの連絡なのだろう。
「壊して返すんだろう。いつも軍のやつはそうだ。私の芸術を。命を。勝手に持っていくんだ。」
相手が軍に所属している何者かであるということは推測できる。私の芸術は物を守るためにあるのであって人を、環境を壊すためのものではない。そこに美しさはない。
私が苛立ちを見せていると相手はこう言うのだ。
「世界を救うためだから仕方がない。あなたから協力がなければ、私達はこうするしか無い」
彼らは私を見ていない。見ているのはフィギュアだけだ。私はフィギュアを生み出す厄介な性格の人間だとしか思われていないだろう。だから、
「できましたよ。」
「はい?協力の準備ができたということでよろしいですか?」
「いえ、去年を上回る傑作ができました。片手間にお話してすいません。今から私がそちらに向かうので。それでは。」
一方的に通話を切り私は登場する。私はエンジニアであってパイロットではない。だが我が子を一方的に奪われ破壊され、そんなことが続くのならば。私は守るために壊す。
工具が散らばり、フィギュアが壁に沿って並べられている仕切りのないワンルームで私は最高傑作とともに家を出る。

 

17分
お題
再利用 身代金 フィギュア

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あずまさん

身売り顔出し担当偏差値6億.com
無職で自分を切り売りしているおじさん。 女装したりタンバリンを叩いたりしながら生きています。 ワインで頭を洗えば、僕のファンができた時にファンの皆様が飲シャンしやすいと思うのでずっとワインで頭を洗っています。

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