「りんごの権利」5分小説即興小説(ショートショート)

目の前には林檎が一つある。
その周りにはヒトが3人と象が1匹。

どう分けようか。

均等に分けるとするならば2回切って四等分だ。
だがそれでいいのだろうか?象はそれで足りるのだろうか?
象にとってそれは塵のようなもので味っ気がなく無意味なのではないか。

それならばいっそのことヒトだけで分けてしまえばいいかもしれない。
だがそれでいいのだろうか?きれいに3等分できるとは思えない。
フウちゃんはいっぱい食べたいという顔をしている。
喧嘩になる可能性がある。

だったらじゃんけんをして一人が貰えるというのはどうだろう?
象にルールを説明してじゃんけんができるようになる頃には林檎が腐っているだろう。意味がない。

しかし、意味がないことは本当に「意味がない」ことなのだろうか?
この世の中は無駄で溢れている。だが、その無駄こそが人を支えているのではないだろうか?

象にじゃんけんを教えてみることにした。丁寧に。グーとちょきとパーを区別できるように表現方法も皆で考えた。2年かかった。案の定、林檎は腐ってしまった。

だが、象はいまや我がサーカス団のメインを担うほどにまで成長した。今日もサーカスの公演で得た収入で象にりんごをたっぷり買ってあげよう。

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あずまさん

身売り顔出し担当偏差値6億.com
無職で自分を切り売りしているおじさん。 女装したりタンバリンを叩いたりしながら生きています。 ワインで頭を洗えば、僕のファンができた時にファンの皆様が飲シャンしやすいと思うのでずっとワインで頭を洗っています。
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