「貴女のお目当ては」15分で作る即興小説(ショートショート)

いつもより涼しい夏休みの一日。
いとこのマナちゃんがやって来た。
マナちゃんは私より2つも年上。今年で大学卒業らしい。研究で忙しいとかで家に帰ることも減っていてマナちゃんの両親は気が気でないようだった。なのに私の家に来た。私はバイトをしながら小説を書いている。大学生と夢を追う私。未だ種すら蒔かれていないような。そんな状況の私。
充実感が違うと感じる。同時に激しい劣等感も感じていた。

「オノちゃんに逢いたくてさ。息抜きに来ちゃった。忙しかったらごめんね?」

オノは私の名字でもなんでも無い。私のペンネームが「猫と斧」だから「オノちゃん」と呼ばれているだけだ。猫成分はどこへいった?

「顔見たくてさ。元気かなって。電話とかLINEだけだとほら、わからないじゃんか。感情とかさ。はっきりとはさ。」

嘘。知ってる。私に会いたいわけではない。顔も見に来たわけでもない。もうわかっている。アレだよね。目的は。

「でさ、アレ。先に見せてもらえないかな?お願いだからさ。気になっちゃって。」
ごはん。
「ん?」
ごはん食べに連れて行って。
「取引しようってこと?もちろん!ご飯食べながら話聞かせてよ!」

都合がいいようにされているんだ。わかってる。私とマナの関係なんて所詮……

「この男とこの男がくっつくのーっ!?!?!?」
いや、だってこっちは明らかにノーマルだし……
「あーっ!解釈!なるほどな~。」
完全に妄想だけで書いてるから、実際どうかは……。マナちゃんの方が人生経験豊富そうだし……。
「いやいやいやいや!な~んにもないよ!ましてや男同士の恋愛は全く見たことも聞いたこともないよ~。それにしても描写がすっと入ってくるのがいいよね~!」
私の作品そんなにいいかな……
「もうバッチリだよ!最ッ高!続き気になって研究蹴ってまで来ちゃうからね!」
まだ発表してないからネットとかには書き込まないでおいてね……
「おーけーおーけー!いや~、また次の巻買うのが楽しみだ!」

マナちゃんは私の書いている小説を目当てにして来ている。目的は私ではない。
私が必要とされている世界はどこにあるのだろう。本当にこのまま生きていていいのだろうか。

「やっぱりオノちゃんがいないとダメだ~。」
どうしてそう思うの?
「なんだかんださ、すぐ対応したりあしらわないで優しく話してくれるしさ。オノちゃんがクールな男の子だったら、私惚れてたなぁ。」
私もマナちゃんがさ
「ちょっとトイレ行ってくる!」

そういうとこだよ。自由なところ。劣等感はあるけれど。尊敬の気持ちもあって。それでさ

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あずまさん

身売り顔出し担当偏差値6億.com
無職で自分を切り売りしているおじさん。 女装したりタンバリンを叩いたりしながら生きています。 ワインで頭を洗えば、僕のファンができた時にファンの皆様が飲シャンしやすいと思うのでずっとワインで頭を洗っています。
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