「わたくし、ちゃぁしゅぅというお肉を食べたことがございませんの……。どなたか、わたくしにちゃぁしゅぅというものを食べさせてはいただけません?」
チャーシューを知らない女がいた。19歳までチャーシューの存在を知らなかった。家の者に内緒で、こっそりと外出した際に商店街で見かけたのだ。
女は驚愕した。普段は見たこともないような外見をそれはしていたからである。
食べ物なのに紐で縛られていて甘じょっぱい匂いが商店街の一部を包み込んでいた。
その女はそれに興味津々だった。毎日何気なく美味しいと思って食べいたもの。好物であるフグなんかよりも食べたいと強く思っていた。
執事が答えた。
「ちゃーしゅー?すぐにお持ちします。」
チャーシューを知らない男がいた。27歳までチャーシューの存在を知らなかった。たった今知った。全くわからなかった。ヒントはお肉でできているということ。それだけであった。執事たるもの、すぐにお嬢様の願いなどは叶えるべきである。それがあまりにも無茶でない限りは。
執事は早速調理に取り掛かった。
調べると、焼豚と書くらしい。
豚肉を焼いた。焼いた豚肉の完成である。
早速お嬢様に持っていった。
「お持ちしました。」
お嬢様はハテナという顔をしながらこう言った。
「もっと、ごろん!と大きくて非常につやつやしていましたわ。多分、これではないと思いますわ。」
執事は失敗した。責任を取らねばならない。機嫌を損ねた場合はクビになっても仕方がない。執事はまだ若手だった。焦りに焦った。
「ここここれはね、とととててもおいしいから一緒に食べようよねです!。」
めちゃくちゃになってしまった。お終いも近い。
お嬢様が答えた。
「一緒に食べてくださるの!?わたくし、いつも一人で食事するのはとてもさみしい気持ちでいっぱいでしたの……。どうもありがとうございます。」
お嬢様が純粋で無垢で良かった。この執事はお嬢様の心をこれから満たすことであろう。
執事はこう答えた。
「ぼぼぼくでよければ!!!!!!なんでも!!!お嬢様と食事だなんて!うれしい!」
素が出てしまった。可愛らしさも大切である。

あずまさん

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