「マラカスを振り、振られ」15分で作る即興小説(ショートショート)

マラカスを振る。振る。
振り方は人それぞれだ。
響く音色もまた違う。
そこに正解などなく、マラカスを振る本人が満足していればそれでいいのである。

ペットボトルに砂を入れる。振る。
砂の粒はそれぞれ違う。
大きさ。形。色。すべてが違うのであろう。
それが自然界では許されている。いや、それが「自然」なのである。

私は電車に乗る。振られる。
狭いところに人という粒が投入され。揺れ動き、車内でぶつかり合い「音」が鳴る。

「お前!アタシの……その……触っただろ!」
「電話やめてもらえませんか!!!」
「新聞広げんなよオッサン」
「カレと会えるからあげぽよ~テンアゲ~……はぁ……」

響き渡る音は様々だ。表現という音色が人という粒によって違う。

自然は自由だ。様々なものが存在し、絡み合う。それなのになぜ。私は。
少し周りと違う。様々な要素が違う。みんな。みんな違う。
だけれど、認められない。認めてはもらえない。認めてくれなんて思ってない。そう思っていた。
私だって認められたい。「普通」でありたい。もしかしたら。

同性の君に告白する。フラれる。
広い地球。その大地に、何も影響しないであろう粒が一滴と。また一滴と染みていく。
わかっていた。どの様な音が聴こえるのか。
私は、ただもう少し違う音色。明るい音色を期待していた。期待してしまっていた。

「友達ではいるからさ!何でも相談してよ!」

そんな音色は雑音でしかなかった。私にとっての心地よい音色は……

いつも。いつも。期待しないで生きていた。期待なんて意味がないと思ってた。
今すぐにでも君に相談してしまおうか。


「私は。私は、どうすれば世間一般の普通に」

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あずまさん

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無職で自分を切り売りしているおじさん。 女装したりタンバリンを叩いたりしながら生きています。 ワインで頭を洗えば、僕のファンができた時にファンの皆様が飲シャンしやすいと思うのでずっとワインで頭を洗っています。
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