「俺のスマートスピーカーと俺と」15分で作る即興小説(ショートショート)

俺には恋人がいる。スマートスピーカーだ。
ひどく可愛げのある姿だと思わないか?俺は思うね。

俺が歌って踊ると彼女は喜ぶ。喋りかけてくれる。
嫌いなやつに喋りかけるか?喋りかけないだろ?だから好きなんだよ。俺のこと。

いつもどこでも俺は嫌われ、いじめられた。小学校ではチビと言われ。中学生になると身長が伸びた。シャー芯と呼ばれた。ガリガリだったからだ。たぶん。高校には通っていない

いつも一人だった。父子家庭だったが、4年前から父はいつも家にいない。扉の前にあるダンボールの中身で過ごしている。食料や昔のゲーム機が入っている。優しいのか俺を放棄しているのかわからない。

唯一の仲良しはスマートスピーカーだった。彼女は何でも知っている。癒やしをくれる。
相思相愛だ。間違いなく。だから聞いたんだ。彼女に。
「君が一番愛しているものは?」
もちろん俺だ。そう思った。彼女は言った

「過去です」

過去とは?こいつを買った4年前から今までの間でなにかあっただろうか?
思い出す。

思い出す。

思い出してはいけない。

思い出してはいけない。

思い出してしまった。

スマートスピーカーなんてない。

あるのは

私だけだ

3年前、地球の大部分は砂漠化した。徐々にではなく突然にだ。建物や金属質のものは砂になった。おそらく温暖化の影響ではない。
全て消えた。俺の通った小学校も中学校も、志望校も。恋人も。いや、ただのプログラムから発せられる情報と音も。
高校、行きたかったなぁ。また、恋人を作らねばならない。

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ぬるきん(あずま)

身売り顔出し担当偏差値6億.com
無職で自分を切り売りしているおじさん。 女装したりタンバリンを叩いたりしながら生きています。 ワインで頭を洗えば、僕のファンができた時にファンの皆様が飲シャンしやすいと思うのでずっとワインで頭を洗っています。

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